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自転車のネジの取り扱い方【2020/02/08更新】
自転車を整備する上で避けて通れないのが、ネジの取り扱いです。
整備の基本ですが、正しい手順やルールを知らないとネジやパーツをだめにする可能性が高まります。
目次
【産業の塩】ネジ
お手元のスマホ、車、自動販売機、電柱、橋、ピアス、机、椅子、、、
辺りを見渡してみると、自転車に限らず至る所にネジは使われていることに気づくでしょう。
古代ギリシア時代に発明されたとされ、最早私たちの文明的な生活にはなくてはならないその重要さからネジは「産業の塩」などと呼ばれたりもします。
自転車におけるネジの役割は物と物を締め付けて固定する、又は繋ぐ、
ネジとして最も一般的な機能のほか、変速機やブレーキのワイヤーテンションを調整する為にも使用されます。


締め付けトルク
ネジでパーツ同士を繋ぐ場合、メーカーが「ネジはこのくらいの力で締めてください」という基準を設けています。
これを締め付けトルクと呼びます。


※締め付けトルクの表記例
感覚で適正トルクで締めるのは難しい為、測定器として、トルクレンチと呼ばれる工具があります。


トルクとは

例えば10N・mという締め付けトルクは、長さが1mあるアーレンキーの先端に約1.0kgの重りをつるした状態に等しいです(長さ50cmなら約2.0kg、25cmなら約3.9kgになります)。
締め付けトルクより弱く締め付けられているとネジ、パーツ共に緩み、
走行中にハンドルがずれるなど事故につながるトラブルの元となります。
「強く締め付けたほうがしっかり固定できる」といってむやみにネジを締め付ける方がいますが、
ネジを締めすぎると、むしろ正しい固定力を得ることが難しくなります。
具体的には締め付けられる、特にカーボン製部品が永久変形(凹み、割れ)を起こし、使えなくなったり
ネジが伸びる限界を越えてねじ切れてしまったりします。
過剰に締め付けるのではなく以下の方法で適切に処理しましょう。
・調整ネジや、弱い素材を固定するには接着剤の一種である緩み止めを塗る。
又はパーツ自体に摩擦増強剤を塗ることで部品同士の摩擦係数を増やし滑りにくくすることができます。

・通常の固定ネジにはグリスを塗る。
グリスを塗ることで滑りやすくなり、逆に緩みやすくなるのでは?と感じるかもしれませんが、
グリスを塗ることで雄ネジと雌ネジが噛み合う際の摩擦係数が安定し、適正なトルクで正確に締め付ける事が可能になります。
また、腐食を起こしネジが回らなくなる、いわゆる固着なども防ぎます。
必ず塗布してください。
このあたりの話は、「軸力」という考え方が重要です。
詳しくはこちら を参照してください
各種工具の使い方
アーレンキーの使い方

アーレンキー(六角レンチ)は、自転車整備に欠かせない工具です。
自転車を整備される場合は、2mm~8mmまでそろったセット販売の物が便利です。
また、出先でのトラブル対応には携帯工具が便利ですが、自宅での本格的な整備をされる場合は携帯工具を使うのは避けてください。
十分な締め付けトルクを得るのが難しいです。また、激安工具の類はネジを痛めてパーツをだめにする可能性がありますので利用を避けてください。
よく使うサイズ
- 8mmは主に3ピースタイプのクランク固定ボルトに用います。最近の2ピースタイプ(ホローテック2など)でこのサイズを必要とするものは少ないです。
- 6mmは主に一本締めタイプのサドル固定ボルト、一部のステム固定ボルトに用います。
- 5mm、4mmはハンドルステム、シートポストや各種ワイヤー等、様々な自転車パーツの取り付けに用いられます。
一般的には、これらのサイズがあれば十分です。しかし、一部パーツは固定用として10mm、微調整用として1.5mm~3mmが必要な場合があります。
締め方
しっかり締める場合は、アーレンキーをボルトの穴に真っ直ぐ奥まで差し込んでください。
下のように斜めになったまま力を掛けると、ボルトをなめる(ねじ締めることが困難になる)可能性が高くなります。絶対にしないでください。
また、下の図のようなゆるみ止めが塗られていないネジは、先述のとおり必ずグリスを塗ってから締めてください。
トルクレンチの扱い方
トルクレンチはあくまで「測定器」、つまりものさしや量りの仲間です。
「通常の工具として扱える」と謳ってある場合以外は、途中までは通常の工具で締め付けてください。
また、「大トルク用」は自転車用としてはほとんど使われませんので、注意してください。
- 適切なソケットを取り付ける
トルクレンチは、様々なネジを測定できるように、「ソケット」と呼ばれる専用のアーレンキー・ソケットレンチを取り付けられるようになっています。
ソケットが付属していない場合は、工具店などで適切なものを購入する必要があります。 トルクレンチの設定をする
デジタル型の場合は、ソケットに触らないで電源を入れます。ソケットに触れると、初期調整に失敗して正しい値が表示されなくなります。プリセット型の場合は、ダイアルなどで目標トルクを設定します。具体的な操作方法はトルクレンチの説明書をご覧下さい。 締め付ける
指定された部分を持って、対象のネジをゆっくりと締めていきます。デジタル型・ビーム型の場合は目標値に到達したら、プリセット型の場合はカチッと音が鳴ったら締め付け完了です。
KEENEST Minimalench



推奨トルク一覧

※上記図はSHIMANO R9100/R8000系の指定トルクになります。
他者や他グレードでは異なる可能性があります。
また、ハンドル⇔ステム間は5~6N/m
フォークコラム⇔ステム間は5~7N/m
シートポスト⇔フレーム間は6~7N/m
であることが大半ですが、正確にはパーツ毎に違いますのでこちらもお確かめください。
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投稿者情報:mechanic
京都のサイクルショップ自転車のQBEI(きゅうべえ)が自転車メンテナンス全般に関して綴ったブログ。ネジの締め方からカーボンバイクの扱い、電動DURA-ACEまで、バイシクルメンテナンス・自転車の扱い方を幅広く掲載。
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