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フロントディレイラーの調整(RD-R9100~7000)
フロントディレーラー。(以下FD)
リアディレイラーと比較して見た目はシンプルですが、インナーギアとアウターギア、大きく直径の異なる2つのギアにチェーンをスムーズに誘導することができる精密機械です。
正確性を強く要求されるパーツの為、各社のコンポーネントやそのグレードの差が体感しやすいパーツの一つと言えるでしょう。
その反面、リアディレイラーの調整よりも幾分か難易度は高いです。
変速してくれないだけならまだマシです。
ペダリング中にチェーンがクランクから脱線してしまった場合、フレームへの噛み込みやチェーンの歪みなど走行不能の深刻なトラブルに繋がる恐れがあり、また、チェーンの張力が無くなることで、ペダルに力を加えコントロールしている体のバランスを崩し落車してしまう危険もあります。
今回は現行のRシリーズ(R9100/DURA-ACE)(R8000/ULTEGRA)(R7000/105)
の変速調整を解説していきます。
旧型の9000系、6800系、5800系、
下位グレードの4700系、R3000、R2000とは調整方法が異なりますのでご注意ください。
参考https://www.qbei.jp/info/bicycle-maintenance/4647
難しいと感じだ場合はプロショップに相談してください。
リアディレイラーの調整はこちら
目次
変速調整
バックアッププレートの取付
パッケージで購入した場合、バックアッププレートという小さな金属の板がFDには付属しています。
これは、FDの変速性能を底上げすると共に、フレームを保護する役割があります。
FDのサポートボルト(後述)が接触する面に写真のように貼り付けます。
FD本体の取付
FDの取付:高さ決め
チェーンリングとFDのプレート端間のクリアランスを1~3mmに調整し仮固定します。下の写真はそれぞれ「距離が近すぎる例」「遠すぎる例」です。
FDの取付:角度決め
FD本体の中央奥にそれぞれL/Hと記された二本のボルトがあります。
これらはインナー/アウターギア時それぞれのFDの位置を決めるボルトになります。
Lボルトを使用し、アウターチェーンリングとFDの外プレートの面を揃えます。
※Lボルトを時計回りに締めるとFDが自転車の外側へ移動し、反時計回りに緩めると奥へ移動します。
このときに、外プレートの尾部をフレーム内側へほんの少し振って固定します。
サポートボルトを時計回りに締め、FDのプレートとチェーンリングを完全に平行にします。
平行になっていない場合、音鳴りの原因となることがあります。
なお、バンドタイプのFDの場合、バンド自体を細かく動かし平行を目指してください。 5~7N/m
インナーケーブルの取付
まず、樹脂製のリンクカバーを外しておきます。
これは、インナーワイヤーをペダリングの邪魔にならないように逃がす役割を持っています。
ワイヤーを挟み込むための溝が切ってあるので必ずそこで固定します。6~7N/m
この時、アジャストボルトは限界まで緩めておきます。
その後、リンクカバーにインナーワイヤーを通し、元に戻します。
※アジャストボルトを締めることで、ワイヤーを固定している台座ごと巻き取られるような動きをし、ワイヤーのテンションを高くできます。
フルアウターの場合は、FD本体に設けられている固定台座に端部を押し込み固定します。
ワイヤーテンションの調整
トリム機能
FDで変速するギアは二段ですが、実はFD自体は四段階動きます。
これはトリム機能というもので、変速動作はしませんが、FDとチェーンとの接触による音鳴り(チェーンラインがきつい場合)を解消するための機構として存在します。
インナー側に一段階、アウター側に一段階ずつ設定されており、シフトレバーの半押しでFDの位置を微調整できます。
インナートリム:インナー×ロー時の音鳴りを解消する。ニュートラルな位置
インナー:1段階ワイヤーを巻き取った状態
アウタートリム:2段階ワイヤーを巻き取った状態。アウター×ロー時の音鳴りを解消する。
アウター:三段階目、中間ギア~アウター×トップ時の音鳴りを解消する。
テンション設定
まず、STIレバーを操作し、アウタートリムの状態(二段階ワイヤーを巻き取る)に設定します。
赤丸で囲った箇所にワイヤーの適正テンションを示す白線があります。
アジャストボルトを締め、ワイヤーのテンションを張ることで二本の白線を真直ぐに繋ぎます。
なお、アジャストボルトを締めすぎてしまい白線をオーバーしてしまった場合は、アジャストボルトを少し緩めテンションを下げた後、レバーを操作しリセットをかけてからやり直してください。
可動域の設定
アウター側の調整
FDをアウタートリムに設定し、リアはローギア(最大ギア、11段目)に設定します。(アウター×ロー)
Hボルトを使用し、FD内側のプレートとチェーンとの隙間が0~0.5mmになるように
※Hボルトを時計回りに締めるとFDが自転車の外側へ移動し、反時計回りに緩めると奥へ移動します。
インナー側の調整
まず、STIレバーを操作し、インナートリム(ワイヤーの巻き取り無し)の状態に設定します。
Lボルトを使用し、FD内プレートとチェーンとの隙間が0~0.5mmになるように調整します。
※Lボルトを時計回りに締めるとFDが自転車の外側へ移動し、反時計回りに緩めると奥へ移動します。
最後に、ワイヤー末端をエンドキャップで保護して基本作業は作業終了です。
微調整
解説通りに作業を行えば概ね変速するように調整ができていると思います。
しかしそれでも音鳴りがする、又は変速がうまく決まらないなどの場合は下記を参考にして下さい。(ワイヤーのテンションが適正なのが前提です。)
なお、 フロントがインナーギアにセットされている状態でリアがトップ側1~3段に入っている(俗に言うインナートップ)の場合、フレームのチェーンステーの長さや、チェーンラインによっては調整しきれず音鳴りが発生する場合があります。
クランク側へチェーンが脱落する場合
チェーンリングからさらに奥へとチェーンを誘導しようとしてしまっている為、Hボルトを緩め、FDをフレーム側へやや引っ込めます。(FDの可動域を制限する)
BB側へチェーンが脱落する場合
FD内側プレートとチェーンとの隙間が0~0.5mmよりも広すぎる可能性が考えられるため、Lボルトを締め、 FDをやや外側へ押し出します。
インナーからアウターへ掛かりにくい場合
可動域を制限しすぎている可能性があるため、Hボルトを締め、FDがやや外側へ移動できるように調整します。
アウターからインナーへ落ちにくい場合
FDの可動域そのものが外側へ偏ってしまっている可能性が考えられるため、
Hボルトを緩め、FDをフレーム側へやや引っ込めます。
フロントディレイラーはフレーム側の台座寸法や、ジオメトリによって影響を受けやすいパーツです。
セオリー通りの調整に加え、経験による微調整も必要な点検箇所になります。
冒頭にもお伝えした通り、難しいと感じだ場合はプロショップに相談してください。 自分で調整してみた後に、プロに点検、アドバイスをしてもらうのも良いでしょう。
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投稿者情報:mechanic
京都のサイクルショップ自転車のQBEI(きゅうべえ)が自転車メンテナンス全般に関して綴ったブログ。ネジの締め方からカーボンバイクの扱い、電動DURA-ACEまで、バイシクルメンテナンス・自転車の扱い方を幅広く掲載。
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