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グラベルロードバイクの選び方
目次
グラベルロードバイクとは?
日本語で「砂利」を意味する「gravel」という単語が差す通り、グラベルロードバイクとは、主にダート(砂利道)と舗装路両方の走行を視野に入れた、長距離走行向けのロードバイクの事を言います。(以下グラベルロード)近年誕生したカテゴリーで、ダートを走行する事を想定して設計されているため通常のロードバイクよりも径の大きいタイヤや、悪路でも安定した制動力を発揮するディスクブレーキが装着されているのが特徴です。
シクロクロスとの違い
よくシクロクロスと混同されておりその境界線もメーカーなどによってまちまちですが、主にシクロクロスは競技規定を満たした、700Cホイール、横幅33mm以下のタイヤを装着したドロップハンドルの自転車の事を言います。
(左側画像:シクロクロス 右側画像:グラベルロード)
またシクロクロスが完全に競技への参加を想定した、軽さを売りにした設計やレース中障害物を超える時に自転車を担ぎやすいようトップチューブがより水平に近い設計になっている一方で、グラベルロードはダートや舗装路を含む長距離を快適に走る事が出来るよう、振動吸収性を高くし、悪路でも安定して走行できるよう頑丈に設計されているのが特徴です。
シクロクロスがMTB寄りのレース用自転車だとすれば、グラベルロードはロードバイクよりのコンフォートな自転車だと言えます。
主な使用シーンと用途
グラベルロードはその性質上短期間のレースよりも長期間のツーリングを重視して設計されています。そのためバイクパッキングのしやすさは勿論の事、晴れた日の舗装路から雨の日の泥道まで、走行する環境に合わせた柔軟な対応が可能になります。サイクルキャリアを取り付け出来るモデルもラインナップされているので、長距離ツーリングを視野に入れてサイドバッグなどを取り付けるのも良いかも知れません。
またディスクブレーキという特性上、雨天走行時に砂利や泥などが詰まりにくい他、タイヤ径の大きさによりロードバイクよりも走行中の安定感が増すので、路面が濡れていてもスリップする心配がありません。これからロードバイクを購入しようとしている初心者の方にもお勧めできます。初めてのスポーツ自転車としてグラベルロードを購入して通勤、通学用に使用するほか、週末などに短距離のツーリングに出かける際にはその快適性と走破能力を最大限発揮してくれるでしょう。
加えてグラベルロードの購入後にロード競技やシクロクロスに興味を持ったとしても、パーツの選び方次第でそのどちら側にも転向出来るといった事も、中性的なカテゴリーを生かしたグラベルロードの強みと言えます。
グラベルロードを選ぶための要素
・拡張性の高さ
キャリアをどれだけ取り付けできるかによっても、グラベルロードの用途の幅が増えます。
拡張性が高いものはフロントフォークに取り付けできるものもあります。
ツーリングやキャンプに行くのに使うのであれば、拡張性が高いモデルがいいでしょう。
・タイヤサイズ
装着しているタイヤのサイズによってグラベルロードカテゴリの中でも
オフロードよりのグラベルロードかロードバイクよりのグラベルロードに大別することができます。
フレームのジオメトリにより、オンロードかオフロードどちらの色が強いかもありますが、簡単に分けると40c前後のタイヤはオフロードより、30C以下はロードよりと言えます。
ホイールとタイヤとの互換性に関しては、30C~40Cまでは700Cであれば互換性があるので、用途や好みに合わせて購入後にはめ変えることができます。
40Cでのオンロード走行
40Cのタイヤは舗装道路では時速20前後での走行が目安になります。それ以上の速度はタイヤの抵抗が大きいためかなりの脚力を必要とします。100kmを超える長距離走行にもあまり向いていません。
40Cでのオフロード走行
オフロードではMTB並みの走破性を発揮します。下りやガレ場での走行も安定感があります。快適性もかなり優れています。
30Cでのオンロード走行
舗装道路を時速30kmで走ることを考えるのであれば、30c以下のタイヤがいいでしょう。
30Cでのオフロード走行
オフロードでは、バイクコントロールのスキルが要求されます。逆にオフロードでそういったバイクコントロールやスリルを楽しみたいのであれば30Cという選択肢もあります。
・ブレーキ
グラベルロードはほとんどがディスクブレーキ仕様ですが、油圧式かワイヤー式かはモデルやグレードによって異なります。
油圧式は価格は高くなりますが、軽い力で高い制動力を発揮します。下りのオフロード走行がメインの方は油圧がお勧めです。
・ホイール固定方法
クイックリリース式、スルーアクスル式があります。
また、下記の様なパターンに分けることができます。前後ともにスルーアクスルがよりハイスペックになります。
前後スルーアクスル
前後クイックリリース式
後スルーアクスル、前クイックリリース式
スルーアクスルにすることで剛性が上がり、高い制動力を発揮します。
おすすめのグラベルロード
一口にグラベルロードといっても、多くのメーカーから使用シーンやライドのスタイルに合わせた、様々な個性的なグラベルロードが販売されています。
目的や機能、使用シーン、自分の好みに合った一台を選んでみてはいかがでしょうか?
FELT VR60
フレームの魔術師、ジム・フェルトで有名なドイツの自転車メーカー、FELTが販売するグラベルロードです。
オールロードと銘打って販売されている事からも分かる通り、このVR60の強みは何といってもその活躍の範囲の広さです。様々なライディングシーンを想定したフレーム設計により、サイクルキャリアやフェンダー、ストレージを装着するための台座が設けられているほか、ノーマルホイールで28Cから35Cのブロックタイヤまで、ホイールを交換すれば23Cのロードタイヤも装着出来るという、まさに文字通り”オールロード”な優れものです。
またアウター側のギアはロードバイク並みのスペックを持ちつつ、ロー側のギアはギアレシオ1:1と、山岳ツーリングなどで用いられるランドナーとほぼ同等のギアを持っているので、平坦なサイクルロードから急峻な山間部の峠道まで、様々な環境に対応できます。
ただしアウターギアととインナーギアの差が大きい分細かなスピード調整が難しくなるため、ペースを細かく調整しながらライドをしたいという方にはお勧めできませんが、オンロードもオフロードも、街乗りもロングライドも全てこなせる一台が欲しいという方には自信を持ってお勧めできる一台です。
JAMIS(ジェイミス) 2018年モデル RENEGADE EXILE (レネゲードエグザイル)
1937年創業のアメリカの老舗自転車メーカー、JAMISが販売するグラベルロードです。 先程紹介したVR60が最大35Cタイヤまで対応していたのに対して、こちらは40Cまで対応しています。フェンダーやサイクルキャリアを装着できる台座が設定されているのは勿論の事、タイヤのチューブレス化が出来る事が特徴です。泊まり込みでのツーリングや山に分け入るようなグラベルライドでは、JAMIS特有のMTB譲りの頑丈なアルミフレームで快適かつ安定したライドを楽しめるでしょう。
しかしながら活躍出来るシーンの多さにおいては先程のVRに少し劣る点があるので、既にロードバイクなどを持っている方や、ロードに寄ったジオメトリを生かしつつツーリングやグラベルをスポーティーにこなしたいという方にお勧めの自転車です。
GT(ジーティー) 2018年モデル GRADE ALLOY EXPERT (グレードアロイ エキスパート700C)
同じくアメリカの、BMXやMTBを得意とするGT Bicyclesが販売するグラベルロードです。
他のメーカーが装備の多様さや売りにしているのに対して、こちらは他の追随を許さない圧倒的なコストパフォーマンスが売り。同価格帯のグラベルロードのコンポーネントではほとんど見られない、SHIMANO 105コンポーネントと油圧ブレーキを装備しています。
更にこちらも、ホイールの交換次第で23Cタイヤから35Cタイヤまで対応可能なワイドタイヤ対応フレームを採用している他、GTが得意とするリアのシートステーをトップチューブまで伸ばした衝撃吸収性の高いトリプルトライアングル構造や、ハンドルのドロップ部を外側にオフセットする事でより快適なポジションを乗り手に提供するなど、悪路やロングライドにおけるグラベルロードとしての快適性をよりいっそう高めたモデルとなっています。
他方このモデルにはサイクルキャリアやストレージを取り付ける台座が設定されていない為、長距離のツーリングのために購入する方よりもグラベルライドや街乗りを快適にこなしたいという方にお勧めです。
MERIDA(メリダ) 2018年モデル SILEX 200 (サイレックス 200)
1972年創業の大手自転車メーカー、MERIDAが送り出したグラベルロードです。
この自転車の最大の特徴は、何といっても装着可能なタイヤの最大サイズ。ここで紹介しているグラベルロードの中では最大の、45Cタイヤまで装着できるというから驚きです。
またタイヤメーカーのMaxxisと共同開発した専用タイヤは、空気圧を上げる事でトレッドの中心部のスリック部分を使い軽快な走りが出来るほか、逆に空気圧を下げる事で左右のグリップ部を使用した安定した走行が出来るので、オンロード、オフロード両方において安定した走行が出来るのもこの自転車の特徴です。
更にグラベルロードの中では珍しいワイヤー内蔵型フレームを始め、ディスクブレーキに放熱フィンを装着している事やフロントフォークの両側にボトルケージの台座が設けられている事など、細部にまでMERIDAのこだわりを見て取る事が出来ます。
またヘッド周りの造形をバイクパッキングでフレームバッグを装着する事を想定して設計している事や、重いバイクパックを携行してロングライドをしても疲労の無いようにしつつ、ジオメトリをよりMTBに近い設計にする事で、オフロードでも安定したハンドリングを実現しているなどあらゆる路面状況で使用できるように設計されている事がこの自転車の強みです。
一方ジオメトリをMTBに近づけることでオフロード走行時においてシビアなハンドル操作を求められる事もある為、この自転車はオフロードで積極的な走りをしたいという方よりも、ちょっとした街乗りからバイクパックを携行したロングライドまで難なくこなしたいという方にお勧めです。
まとめ
ここまでをまとめると、
FELT VR60:スピード以外は全部楽しめるバイク
JAMIS RENEGADE EXILE:ライドはこの上無く快適だが街乗りには少しキツいバイク
GT GRADE ALLOY EXPERT:コスパでは圧倒的に強いが積載量は低いバイク
MERIDA SILEX 200:細部へのこだわりが効いているが街乗りやツーリング向けのバイク
となります。
競技に寄ったMTBやロードバイクも良いですが、オンロードとオフロード両方を走破できるグラベルロードも、この機会に購入の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
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投稿者情報:mechanic
京都のサイクルショップ自転車のQBEI(きゅうべえ)が自転車メンテナンス全般に関して綴ったブログ。ネジの締め方からカーボンバイクの扱い、電動DURA-ACEまで、バイシクルメンテナンス・自転車の扱い方を幅広く掲載。
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