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ロードバイクのカーボン製パーツの取扱い方法【2016/07/11追記】
ハイエンド車種を中心に、自転車に広く使われる「カーボン」。正しい扱い方を知ることで寿命を延ばし、トラブルを予防することが出来ます。
目次
「カーボン」とは
いわゆる「カーボン」と呼ばれるものの正体は、「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)」、つまり、カーボン繊維で強化したプラスチックです。カーボン繊維を織物のようにして布状にし、それにエポキシ樹脂などを染み込ませて固めたものです。
金属材料(アルミやクロモリ)と比べて、
- 非常に軽い
- 自由に成形でき、各部の特性を自由にコントロールできる
- 強度が高い
- 弾性率が高い。つまり、変形しにくい
というメリットがあり、航空機などにも使われます。
自転車におけるカーボン素材の利用
このような優れた特性から、カーボン素材は、ハイエンド車種では積極的に採用され、軽量化に貢献しています。また、一般のロードバイクでもカーボンフォーク、カーボンシートポスト、カーボンバック(シートステーがカーボン)としてよく採用されています。
カーボンの種類
自転車に使われるカーボンの性能を説明するのに、「50HM1Kカーボン使用!」などと書かれている場合があります。ここで使われる「K」や「HM(ハイモジュラス)」の意味は、
- K(カーボン繊維の本数)Kは、カーボン繊維を何本束ねた糸を使ってカーボンシートを製造したか、を示しています。1Kは1000本の糸を束ねた物を指します。つまり、12Kなどはかなり太い糸を織ったシートを使っている、ということです。これによる差は、1Kは細い糸で編んだ織物、12Kは毛糸などの太い糸でできた織物、と考えるとよくわかり、前者は硬めで薄手かつ軽く、後者は柔らかく厚めで重めになります。ただ、Kが異なるシートを部位ごとに使い分けている製品もありますので、この値がそのまま性能の指標になるわけではありません。また、表面にカーボン繊維の模様が見えている製品は、表面に化粧カーボンという、装飾のための12Kカーボンシートをかぶせてあることが多いです。
- HM(ハイモジュラス、高弾性カーボン)HM(ハイモジュラス、高弾性カーボン)は、従来のカーボン繊維より高弾性率、つまり大変変形しにくいものを使って成形したカーボン素材です。たとえば50HMは、1mm^2あたり50tの引張強度を持つ、という意味です。従来品より硬い製品を作ることができます。
カーボン製品の取り扱い
カーボン繊維そのものの寿命は数十~百年あるとされています。しかし、プラスチック(エポキシ樹脂)の寿命が扱われ方によって大きく変化するので、自転車では数年程度と言われています。
- 樹脂の吸湿を防ぐカーボン製品は、表面に施されたウレタン塗装によって保護されています。なので、表面の塗装がはがれると吸湿します。また、塗装はフレーム内部には施されていないので、自転車を水洗いするときは注意してください。野ざらしは避けてください。樹脂は吸湿すると強度が低下します。吸湿したカーボン製品が低温になると、樹脂内部で水分が凍結し、まれに破損することがあります。
- 落車したら注意カーボンは高い強度を持っていますが、限界を超えた衝撃や、局所的な衝撃が加わると、素材の内部にダメージを受けます。なので、金属素材のような傷、ヒビは生じにくく、破損が発見しにくいです。そのため、落車、事故などで大きな衝撃が加わったカーボン製品は、カーボンがはがれて浮いたような箇所や線状の亀裂が無いかよくチェックし、異常が無い場合でも専門店でチェックを受けてください。カーボンは金属素材に比べて衝撃の伝達が早いので、ぶつかった部位以外がダメージを受ける場合があります。
- スタンドなどの取り付け不可
フォークコラムのように、他のパーツによって締め付けられている部分以外には、(キックスタンドのような)外部パーツを取り付けることはできません。カーボンは想定されていない部分の圧縮には大変弱いため、破損の原因になります。同じ理由で、カーボンシートポストにシートポストキャリアを装着することもできません。
- 締め付けトルクに注意
トルクレンチの扱い方もあわせてご覧下さい。
カーボン製品を取り付けるとき、締めつけ方が悪いとパーツにダメージを与える場合があります。なので、カーボンパーツを取り付けるときは、専用の固定パーツで、トルクレンチを利用して指定トルクで締め付けてください。なお、トルクレンチを利用される際には必ずねじ山にグリスなどの潤滑剤を塗っておいてください。締め付けトルクが無意味になります。
締め付け部分にこのような摩擦増強剤を塗ると、低いトルクで十分固定できるのでおすすめです。
カーボンパーツの取り付けについて
- カーボンシートポスト
カーボンシートポストの場合、シートポストの切れ込みと、シートクランプの切れ込みとを合わせて固定するとそこに締め付け力が集中してシートポストの破断につながる場合があります。
カーボンシートポストを使う際は、斜めに切れ込みが入っているシートクランプを使う。または、切れ込みがまっすぐなものは、シートポストと、シートクランプの切れ込みをずらしても、力を分散させることができます。
実際に締め付ける際は、トルクレンチを用いて指定トルクで締め付けてください。シートポストにカーボングリスを薄く塗ると摩擦が上がり、少ない力で占めても固定することができます。特に、指定トルクで占めても固定力が足りない場合は使用してください。
- カーボンハンドル
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ステムにこのようなカーボンハンドル対応のものを使って、ステムと接する部分に薄く摩擦増強剤を塗ってください。ステムボルトは画像の順番で、少しずつ締めていってください。一本ずつ締めるときちんと固定できません。
また、MTB用カーボンハンドルの中には、バーエンドバー利用不可のものもありますので注意してください。アルミハンドル×アルミステムの組み合わせは締め付けトルクさえきちんと守っていれば大丈夫です。しかし、アルミステム×カーボンステムなどの組み合わせには十分注意してください。アルミステムの締め付け指定トルクでカーボンハンドルを固定すると、多くの場合締め付けすぎになり、破損などを招き非常に危険です。逆にカーボンステム×アルミハンドルの場合は、締め付けトルクを規定通りにすると十分に固定されずに走行中ハンドルがずれるなどが起こりかねません。必ず「締め付けられる方」の指定トルクを参考にしてください。
アルミステム×カーボンハンドルなどの組み合わせで使用するときには、ファイバーグリップ、カーボングリスなどを塗布し、十分に気を付けて使用してください
- カーボンコラムのフォーク
アヘッドタイプで、フォークとフレーム、ステムをつなぐ部分がカーボン(カーボンコラム)ものが、高級フォークを中心に存在します。このようなフォークのコラムカットは必ずソーガイドとのこぎりで行い(パイプカッター不可)、スターファングルナットではなくプレッシャープラグを使って、ステムとの接続部分には薄く摩擦増強剤を塗ってください。ステムボルトは交互に少しずつ締めていってください。
このように、カーボンは神経質な素材です。そのことを意識し、よく点検を行ってください。
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投稿者情報:mechanic
京都のサイクルショップ自転車のQBEI(きゅうべえ)が自転車メンテナンス全般に関して綴ったブログ。ネジの締め方からカーボンバイクの扱い、電動DURA-ACEまで、バイシクルメンテナンス・自転車の扱い方を幅広く掲載。
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- 2010/12/18 - mechanic
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こんにちはスタッフ山田です。
ご申告の症状はカーボン車体で多々経験しております。
(但しSONIXは完売の為、現物がなくプレッシャープラグの具体的形状や
トルク数値は把握できない状況でのご返答になりますことを何卒ご了承くださいませ。)考えられる要因はいくつかございます。
まず、プレッシャープラグ単体でちゃんと機能しているか確認してください。
締めていっても、ネジが引っかかってトルクが加わっていてもプラグの勘合部分
が開いていないこともございます。
(その場合はネジ部分をグリスUPしてください。)脱脂も必要です。接触部分に油脂が残っていますと滑りやすくなりますので
脱脂材で除去します。
我々ではワコーズを使っています。
http://www.qbei.jp/product_info/product/17046/manufacturer/195/また、ステムには「ファイバーグリップ」など滑り止め材を使っていただくのも
効果があります。
我々では フィニッシュライン製品を使っております。
http://www.qbei.jp/product_info/product/22221/manufacturer/60/実際のところカーボン車では、こまめなメンテナンスが必要となりますので
きっちり固定できても定期的な調整は必要となります。
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- 2011/05/14 - クロダ
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はじめまして、カーボンフレームの塗装が飛び石で剥がれてしまった場合はどのように対処したらいいのでしょうか?
市販されている自動車用のタッチアップペイントなどを塗ってしまっていいのでしょうか?
何かいい方法がありましたら教えてください。
宜しくお願いいたします。
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- 2011/05/18 - mechanic
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お問合せの件ですが、まずはキズの程度にもよるかと思います。
表面のクリア樹脂が削れた程度でしたら、塗料による補修でもよいかもしれません。
ですが、カーボン生地も削れているようですと、カーボンは吸湿性があるため、塗料に傷められるおそれがあります。
キズを守るという意味で、ステッカーなどを貼っておくのもよいでしょう。
また、あまり気になるキズでしたら、カーボン補修を行っている専門店にもちこんで、お尋ねになることをお勧めいたします。
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- 2013/06/12 - どうしよう
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購入したカーボンDHバー(3T製 φ22mm)の内側の面取りがきっちりとされていません。
リーマーなどで2mmほど穴を大きくすることは可能でしょうか?長さは30mmほどにわたって作業が必要です。
やっぱし割れますよね?やすりで削るにはちょっと長すぎてしんどい。
何か良い方法があれば教えてください。
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- 2013/06/14 - mechanic
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スタッフ森田です。
「内側の面取りがきっちりとされていません」といいますのは、内側がきれいに円型になっていないということでしょうか。
もしそういうことでしたら、使用に支障はなさそうですので、いじらずにそのままにしておいたほうが良いと思います。
カーボン繊維は切ったり削ったりしますと綻びのもととなってしまいますので。
またはそういうことではなくて、何か使用にさしつかえる状態でしたら、一度購入店に見せて相談されたほうがよいかと思います。
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- 2017/08/26 - 齋藤武
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カーボンフレームの手入れは何をすればいいですか?
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- 2017/08/27 - mechanic
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齋藤 様
お問い合わせありがとうございます。
お尋ねの件ですが、通常のお手入れといたしましては、金属フレームと同じく、汚れはふき取ってやる、水洗いしすぎないように、水洗いの後はしっかり乾かす、などです。
あと、屋外保管など紫外線に当たるような保管方法はさけてください。
また、取り付け部品のネジがゆるんできて増し締めする際、締め付けトルクには十分ご注意ください。
ステム、シートクランプなど、推奨トルクが記載されている場合がありますが、それらは金属部品に対して使用する場合のトルクです。対カーボンでそのトルクでしめますと、カーボンを破損してしまいます。
規定のおよそ3分の1くらいを目安にしめてみて、固定状態を確認しながら、不足であればもう少ししめてみる感じにしてください。また、亀裂などを見つけたら、使用はおやめください。
よろしくお願いいたします。
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QBEI 山田様
初めまして以前テスタッチフレームを購入した○○(お名前は伏せさせていただいております)と申します。
カーボンフォークのアンカーボルト固定がうまく固定できず困っております。
フレームにカーボンフォークをセットしアンカーボルトを固定後にスペーさー、ステムをセットし
最後にキャップボルトを締めますが、その際にある程度締めるとキャップボルトが回ってしまい固定できません。
キャップボルトを締めると先にセットしたアンカーボルトが浮き上がってしまうようです。
締め付けトルクは12kg前後とのことですが、とてもそこまで締まりません。(実際は3kg程度で回ってしまいます)
フレームはルイガノSONIXです。一応フォークとフレームにガタはないのですが怖くて乗れません。テスタッチクロモリは
12kgで締まり乗っています。
以上 お手数をお手数ですがご教示のほどお願いいたします。