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ワイヤリング(ブレーキワイヤ・シフトワイヤ)について
ロングライド用のロードバイクやトレイル用MTB、レース用シクロクロス車に、「ブレーキの引きが重くて効きが悪くなった」「変速調整はできているのに変速がもたつく・決まらない」といった症状は有りませんか?その原因の一つにワイヤーの潤滑不良が挙げられます。今回はその予防策・一歩進んでブレーキや変速の性能を向上させるテクニックについて解説します。
ワイヤーのグリスアップ・交換については変速ワイヤー、ブレーキワイヤーのグリスアップなどの記事もあわせてご覧ください。
目次
ワイヤーの潤滑不良で起こる症状
- ブレーキの引きが重く、レバーを戻すとしばらくのあいだレバーが正常に動作しない
- シフトアップ・シフトダウン共にうまく決まらない
- 走行中突然シフトアップ・ダウンするが、歯飛びはない
- ブレーキレバー・シフトレバーの操作が重い
ワイヤーの引きが重くなる原因
- (組立時)アウターワイヤーの取り回しが不適切
ワイヤーは可能な限り最短距離で配線して下さい。アウターワイヤーは力がかかると僅かに縮むので、無駄に長いと力が逃げてしまいます。 - (組立時)インナーワイヤーの潤滑不良・クセが付いている
潤滑剤がなくなった状態で利用を続けたり、組み付け時にインナーワイヤーに無理な力をかけて折り目がつくと、引きが重くなります。きちんと潤滑し、傷んでいる場合には新品のインナーワイヤーに交換することで解決します。鉄製のインナーワイヤーは錆びて動きが悪くなりやすいので、ステンレス製インナーワイヤーをお勧めします。
- アウターワイヤーに泥やゴミが入っている
シールドキャップなどで泥対策などをしっかり行ったとしても、アウター内には少しづつゴミが入っていきます。定期的に清掃とオイルアップ・グリスアップを行うことで回復します。
シフトワイヤーがBB下を通るタイプのフレームでは、特に泥や雪で動きが悪くなりがちです。場合によってはフレーム下を通るインナーワイヤーに保護用のライナーをかぶせて保護します。
- ワイヤーが劣化している
ブレーキアウター・シフトアウターの内側には、滑りを良くするためのポリエチレン、もしくはテフロン製ライナーが入っています。これが劣化すると引きが重くなります。特に7900Dura以降のシマノレバーのようなブレーキワイヤー・シフトワイヤー共にハンドルに沿わせるタイプのシフターでは劣化が早いため、性能維持のためには定期的にアウターも交換することをおすすめします。また、アウターに無理な力がかかり折り目がつくと、引きが著しく重くなりますので、この場合も交換が必要です。
ワイヤーの引きを軽くする方法:組み付け時の工夫
- アウターワイヤーはスムースに配線する
ドロップハンドル車の場合、アウターをハンドルにきっちり密着させるとタッチが改善します。
- 断面処理は丁寧に行う
アウターケーブルの断面は、ヤスリなどで綺麗に処理するとタッチが改善されます。この時中のライナーが塞がらないように注意して下さい。
- シールドキャップ等で防水性を高める
シールドキャップに置き換えることで、防水性能が向上します。これにライナーを組み合わせ、インナーワイヤーが一切露出しないようにすると更に防水性能が高まります。
- 高性能ワイヤを使う
サードパーティ製の高性能ワイヤーセットを用いることで、アウターワイヤーの剛性が向上し、タッチが良くなる可能性があります。しかし、高剛性アウターは使いこなしにノウハウが必要なため、「ハンドルが切りにくい」「引きが逆に重くなった」などのトラブルを誘発してしまうこともありえます。「高剛性アウターは曲げにくく、一般に太め」ということを頭に入れておいて下さい。
ワイヤーの引きを軽くする方法:潤滑油の選定
ブレーキワイヤには通常グリスを塗って組み付けますが、高粘度なグリスを分厚く塗ると汚れが付着し、逆に性能が劣化してしまいます。アウターに入る部分のみに、ウェスなどでごく薄く塗りこんでください。
シフトワイヤには変速性能を損なわないために、できるだけ低粘度なグリス・オイルを入れます。専用グリスやシリコンオイルをお勧めします。
SHIMANO (シマノ) GREASE for SIS-SP41
特に泥や埃の多いオフロード走行をされる場合は、ブレーキワイヤやシフトワイヤにワックスタイプの潤滑剤とコーティング済みインナーワイヤを使うことで、軽い引きを長時間持続させることができる可能性があります。
コーティング済インナーワイヤー一覧
また、ワイヤのオイルアップ・グリスアップ前には、ディグリーザーやアルコールティッシュなどでアウターワイヤ内に残っている潤滑剤や汚れを取り除いて下さい。
根本的な解決:油圧ブレーキ・電動シフト
MTBで本格的な悪路走行をされる場合や、ロードバイクでシフトレバー操作の負担を無くしたい場合は、油圧ブレーキシステム・電動シフターなどの採用も検討されることをお勧めします。
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投稿者情報:mechanic
京都のサイクルショップ自転車のQBEI(きゅうべえ)が自転車メンテナンス全般に関して綴ったブログ。ネジの締め方からカーボンバイクの扱い、電動DURA-ACEまで、バイシクルメンテナンス・自転車の扱い方を幅広く掲載。
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