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【2016/03/09追記】BB(ボトムブラケット)の規格
クランク取り付け軸(BB、ボトムブラケット)は、剛性、軽量性を追及する過程で規格が増え、汎用のねじ切りタイプから、ベアリングがフレームに圧入された、専用クランクとセットでのみ使えるタイプまで存在するようになりました。
目次
BBとは
BBとは、自転車フレームにおけるクランク軸受け取り付け部分を指す名称です。ここには必ずクランク軸受け(BBユニット)が入るので、軸受けの事を指して「BB」と呼ぶ方もいます。
BBは駆動系を支える中心パーツ。こぎての力を受け止めるのに必要な剛性を上げ、軽量化を図るために軸の径や長さを変え、各パーツメーカーやフレームメーカーが独自の規格を生み出してきました。その結果多くの規格が乱立しています。
<BB、クランク適合及び、取り付け参考アダプター>
BBサイズ 幅/シェル内径mm※1 |
シマノ ホローテック2 (24mm) |
カンパニョーロ パワートルク (25mm) |
カンパニョーロ ウルトラトルク (25mm) |
カンパニョーロ オーバートルク (30mm) |
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ねじ切り | BSC/JIS | 68/34.8 | ◎SM-BBR60 | ◎Campagnolo OC13-CEG |
◎Campagnolo OC12-REG |
◎Campagnolo OC14-COS1G |
ITA | 70/34.8 | ◎ SM-BBR60 | ◎Campagnolo OC13-CEG |
◎Campagnolo OC12-REG |
× | |
圧入 | BB30 | 68/42 | △ KCNC BB30 | ◎Campagnolo IC13-PT42 |
◎Campagnolo IC12-RE42 |
◎Campagnolo IC14-COS42 |
BB30A※2 | 73/42 | × | × | × | ||
プレスフィット30 (PF30) |
68/46 | △ TNI BB30 Adapter46mm |
◎Campagnolo IC13-PT46 |
◎Campagnolo IC12-RE46 |
◎Campagnolo IC14-COS46 |
|
プレスフィットBB (BB86) |
86.5/41 | ◎ SM-BB72-41B | ◎ Campagnolo IC13-PT41 |
◎Campagnolo IC12-RE41 |
× | |
BBライト | 79/46 | × |
◎Campagnolo |
× | ||
BB90 | 90.5/37 | △ TNI BB90 Kit | × | × | × | |
BB386EVO | 86.5/46 | ◎Campagnolo IC14-PT386 |
◎Campagnolo IC14-UT386 |
◎Campagnolo IC14-COS1386 |
||
BB65※3 | 63.5/65 | BSCアダプター | BSCアダプター | BSCアダプター | BSCアダプター |
※1シェル内径=圧入径
※2 KCNCのラインナップにMTB用のBBにシェル幅:68/73mm という規格のBBがあります。シェル幅73mm、圧入径42mmのBB30Aに使えそうですが、この規格を採用しているキャノンデールジャパンやKCNCの代理店に確認したところ、BB30A用ではないので適合するかどうかは分からないとのことです。
KCNC BB30 シマノ規格 MTB(ライトウェイHP)
※3 別売りのBSCアダプターの装着でJISのBBが取り付けできます。
ねじ切り
ネジの切られたBBは、古くから存在し、ユーザーが好みのクランクに交換でき、故障したら、工具さえあれば新しいものに交換できるというメリットがあります。現在は、左が正ネジ、右が逆ネジのJIS規格で統一されていますが、一部のイタリア製高級フレームでは、左右とも正ネジのイタリアンBBになっていることがあります。

カンパニョーロやシマノのホローテック2のねじ切りBBカップの取り外し工具
ピナレロの2015年モデルはハイエンドから全てITA規格のねじ切りになっています。ねじ切りのほうがメンテナンス性や信頼性に優れていることからこの規格に戻った様です。剛性もねじ切りのほうが高いとも言われています。
クランクに対応するBBユニット(ベアリングの形状からカートリッジBBとも言われる)を、対応する工具でBBのねじ山に取り付けてからクランクを取り付けます。
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四角軸
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古くからある規格で、BBユニットをBBに取り付け、左右にそれぞれ対応するクランクを取り付けます。クランク取り付け軸がテーパーの付いた四角形の為、四角軸BBとも呼ばれます。軸の長さ、テーパーの角度によってクランク、BBユニットの組み合わせが決まっていますので、交換される場合はよく確認してください。
四角軸は、スタンダード規格の地位にあり、取り付け・取り外し工具も広く普及していますが、強く踏むとたわむ、BB自体の重量が重くなりがち、取り付けるたびに微妙にクランクの位置が変わるので、その都度フロントディレイラーの微調整が必要、という欠点があります。
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オクタリンク・ISIS
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四角軸の欠点を解消する為、クランク取り付け軸を太い円筒にし、スプライン(ギザギザ)をつけたものが、オクタリンク系のBBです。シマノは「オクタリンク」という名称で、8歯のセレーションを持つシステムを出しています。クランクによって二種類のBBユニットを使い分ける必要があります(DuraAce、XTR用BBとDeore、Tiagra用BBは異なります)。
似たものとして、10歯のセレーションを持つ「ISIS」が、SRAMなどから発売されています。当然「オクタリンク」と互換性はありません
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ホローテックⅡ型、およびその類似型
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BB付近の剛性を大きく引き上げ、軽量化を果たすために、BBユニットをBBの外側に配置したのが「ホローテックⅡ」で採用されたクランク固定法です。従来のBBユニットが、軸受としての役割と左右のクランクをつなぐ役割を果たしていたのとは異なり、ホローテックⅡ型のBBユニット(BBカップと呼ばれます)は、BB外側にねじ込まれた大口径のカートリッジベアリングで、軸受としての機能しか持っていません。軸はクランクから直接生えているので、固定すべき部分が少ないのが特徴です。
シマノ・カンパニョーロ・Truvativ/SRAMなど、各社形状が異なるので、BBユニットを交換される際は規格に注意してください。
※細かいことですが、「ホローテックⅡ」は中空クランクシステムのことを指すので、2010年時点、中空クランクでないSORA、TIAGRAクランクは、固定法は同一でも「2ピースクランク」と呼ばれています。
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カンパニョーロパワー・トルク
- ドライブトレイン側のベアリングはクランク軸に圧入されている。左側ベアリングはカップに圧入されている。クランクはホローテックと同様のドライブトレイン側の軸を左クランクで受け止め固定する方式。
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カンパニョーロウルトラ・トルク
- パワートルクと異なり、両方のベアリングが軸に圧入されており、BBカップはそのベアリングを受け止めるだけになっている。そのためクランクの軸は左右から伸びており、シェル内の真ん中で結合される。
圧入タイプ
BB30やプレスフィットBBなど、新しいBB規格は、従来のフレーム規格を捨てることで性能を追求しています。よって専用クランク以外は原則的に取り付けることが出来ません。アダプターもありますが、フレームメーカーは変換アダプターを取り付けての利用は推奨していません。また、アダプター等を用いて使用パーツの増加により、重量増と、抵抗の増加、パワーロスも生じると考えられています。またねじ切りのBBよりも取り外しが難しく、取り外しはフレームへのダメージもあるためメンテナンス性の面では劣っている部分もあります。
圧入BBフレームへの非圧入による取付
圧入ではなくBBカップの左右のカップ同士をネジで固定することにより、フレームへ装着するタイプのBBカップもあります。
KCNCやTRiPEAKというメーカーが出しています。
メリット
- 通常圧入の場合左右のカップは連結しないため、フレームにハマっているだけの状態と言えます。そのためクランクに力が加わると、よじれやたわみが起こります。
- これはパワーロスが生じると同時に、フレームへのダメージへとつながります。圧入時にはかっちりはまっていたBBは使っているうちに、緩みが発生してきます。BBから異音発生の原因にもなります。ねじ固定式は左右のカップ同士をネジで固定して左右からフレームをしっかり挟み込みます。よじれやたわみを防ぎパワーロスとフレームへのダメージを軽減します。
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圧入BBフレームをねじ切りに変換
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圧入BBフレームのBBをねじ切り式に変換するBBカップもTRiPEAK(トライピーク)から出ています。これを使うことで、四角軸やオクタリンクのBBを装着することができます。
圧入の場合ベアリング交換のさい圧入されたBBをフレームから取り外さなくてはなりません。その際フレームへのダメージが生じる場合があります。このBBでねじ切りにすることでホローテックⅡ用のBBカップを装着してホローテックⅡのクランクを使うことができます。この場合ベアリング交換が必要になった時でもBBカップを専用工具でフレームへのダメージ無しに取り外すことができます。
BB30をJISに変換
TRiPEAK(トライピーク) BB30 TO JIS
プレスフィット30をJISに変換
TRiPEAK(トライピーク) PF30 TO JIS
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BB30
- Cannondaleが2000年に発表した規格で、BBを大口径化、ナロー化した独自規格。現在では多くのメーカーで採用されています。専用のカートリッジベアリングをフレームに直接圧入しています。そのためフレームのシェル内壁の精度等で音鳴りの発生が指摘されています。これを解決したのが直接圧入ではなくカップ入りのベアリングを圧入するプレスフィット30です。軸径30mmのクランクではなく、24mm軸のシマノ等を使う場合は、ベアリングの直接圧入ではなく、カップに入ったベアリングを圧入することもできるため、その場合、シェル内部の精度に影響されずに性能を確保できます。
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BB30A
- キャノンデールの SYNAPSE CARBONに採用された規格。圧入径42mmのため、BB30のシェル幅を42mmから73mmに伸ばしたような規格です。この規格は2013年に登場とまだ新しい規格のため、2014年の段階では軸径30mm以外のクランクを装着するためのアダプターが存在しません。デュラエースの様な軸径24mmのシマノのクランクも使う事ができませんでした。
現在ではいくつか30AでホローテックⅡを使うためのBBが出てきています。TRiPEAK(トライピーク) TFBB BB30A
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プレスフィット30(PF30)
- 圧入径を42mmから46mmに広げ、ベアリングを直接圧入するのではなくカップに入ったベアリングを圧入する方式。フレームのシェル内壁の精度に左右されずにその性能を発揮する事ができます。現在では、BB30と並んで多くのモデルに採用されています。
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プレスフィット30(PF30)
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プレスフィットBB(BB86)
- カップに入った内径24mmのベアリングを圧入する方式。軸径24mmのシマノのホローテックⅡクランクに最適化された規格。「プレスフィットBB86」とも呼ばれます。軸径30mmに適したPF30と異なりアダプター無しで24mmの軸一体型クランクを直接取り付けることが出来ます。
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BBライト
- サーヴェロに採用される規格。軸径30mm用で、24mm軸クランクの使用にはアダプターが必要。BBシェルを79mmに延長すると共に、反ドライブ側のカップをドライブ側より11mm延長させることで剛性を上げている。
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BB90
- トレックに採用される規格。シェル幅を90.5mmに延長。クランクの軸径に合ったベアリングを圧入するしようとなっている。ただ圧入径が37mmなので、軸径30mm用のベアリングは打ち込む事が出来ないため、30mmクランクは使用できない。
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BB386EVO
- FSAが打ち出した規格。圧入径46mmのプレスフィット30とシェル幅86.5のBB86を合わせたような規格で、圧入径46、シェル幅86.5となっている。
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BB65
- ルックの795や695に採用されるルック独自の規格。シェル幅を63.5に狭め、その代わりに圧入径を65mmに広げている。
- クランクは左右クランクと軸完が全一体化したルック独自のZED2クランクが使われる。ルックが出している別売りのBSC(JIS)アダプターを取り付ければJISのボトムブラケットが装着できる。
OSBB
specilized(スペシャライズド)が採用しているBB規格です。シェル幅61.5mm、内径46mmです。適合BBを使えば30mm軸のクランクや24mm軸のホローテックⅡとも互換性があります。
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その他
- 他にも特定メーカーしか採用していない規格が多数存在しています。そのため補修パーツの組み合わせはプロショップでも完全に把握できておらず、すべての補修パーツを揃えることもほぼ不可能、というのが現状です。一般的なネジ切りBBでない場合は、マニュアルで規格や補修パーツの入手路について把握しておくことをおすすめします。
BBユニットの寿命
BBユニットのベアリングは、一般に長寿命で、定期的な点検さえ行っていれば問題が起こりにくい部分です。しかし、雨ざらしにしたり、競技レベルでのライディングを続けると交換が必要になります。またメンテナンスの際は、BB付近に高水圧で洗浄しない、ディグリーザーを直接かけない等の注意が必要です。
乗車前の点検(スポーツ自転車編) 後編もあわせて御覧ください。
最後に
ピナレロがITAスレッドに回帰したように、他のメーカーもねじ切りに戻る可能性もあります。またそれに対抗すべく剛性を上げた新規格のBBも出てくる事でしょう。この様な規格の乱立はBBだけではなくヘッドパーツ等にもあり、これからもっと様々な規格で自転車が構成されるかもしれません。各メーカー性能を上げ、プロのレースで結果を残し、他メーカーよりも優位に立つ。そうやって生まれた機材を一般ユーザーも使う事ができる自転車の世界ではいたしかたない事かもしれません。ただし少しでもその混乱を和らげる事ができるように、役立つ情報を多く発信していきたいと思います。
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投稿者情報:mechanic
京都のサイクルショップ自転車のQBEI(きゅうべえ)が自転車メンテナンス全般に関して綴ったブログ。ネジの締め方からカーボンバイクの扱い、電動DURA-ACEまで、バイシクルメンテナンス・自転車の扱い方を幅広く掲載。
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- 2017/10/13 - mechanic
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お問い合わせありがとうございます。
お調べしたところ、BSAのねじ切りのタイプのBBが付いていると思われます。
・fsa mega exo
・ckt1 farenheit-carbon
このクランクとBBは互換性はあります。クランクに合うBBですが、BSAは種類が豊富なので、一概にこれがいいとは言えませんが、
メンテナンス・耐久性面でオススメはシマノのBBです。
宜しくお願いします。
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- 2017/10/18 - 鬼頭
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gios Tornad 105仕様に乗ってます。最近BB付近から異音が発生してきました。クランクを外してみてベアリングを点検してみたところ、錆びが発生していました。そこで、BBを変えようと思い仕様書を調べたところ、PT-6635R RF-30 (68×46)と書いてありました。この規格は一般的なBB30とは違うのでしょうか?
また、ねじ付きのBBに変える場合適合するアダプターはあるのでしょうか?
よろしくお願い致します。
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- 2017/10/21 - mechanic
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鬼頭 様
お問合せありがとうございます。
「PT-6635R RF-30 (68×46)」
これは圧入式のBBで、フレーム側の規格はPF30というものと同じです。
BBの内径46mm、幅68mmです。
念のため、この通りか測ってみてください。
2018年モデルの「TORNADO 105」は圧入式ではない、ネジ込み式の「シマノ SM-BBR60」となっております。ただし、PF30のボトムブラケットそのものは、クランクシャフト30mm用ですので、シマノのクランク(24mm)をはめるにはそのままでは使えません。
PF30規格のフレームに適合した24mm対応のボトムブラケットを使うことになります。また、BB30は内径42mm、幅68mmで、規格が異なります。
PF30規格のフレームにシマノ・ホローテックなどのネジ式BBを付けるためのアダプターはFSAから「B3167 PF30 アダプ
ター」、TNIから「BSA スレッドスリーブ」という名前で出てはいます。
ただ、着脱は簡単ではないようです。
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- 2019/01/08 - マスダトモヒト
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初めまして、失礼します。
先日新しくフレームを購入し、現在使用しているコンポネートを移植しようとしていたのですが、いざ組み立ててみるとクランクは取り付け可能なのですが、チェーンリングを取り付けようとするとチェーンステーとチェーンリングナットが干渉して取り付けできませんでした。フレームによって使用出来るコンポネートが限られてしまうのでしょうか?ちなみに仕様として、
フレーム FOCUS CAYO 2016年モデル
コンポネート カンパニョーロ10s コーラス
BB PF30のため、ウィッシュボーンのカンパ対応のBBにしました。わかれば回答願います。長文すいません。
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- 2019/08/05 - mechanic
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お問い合わせありがとうございます
昨今のフレームはプレスフィット規格によるBB周りのボリューム増加の為、互換性に関しては昔よりシビアになっていている印象です。
CAYOはチェーンが脱落した際フレームを保護するプレートがチェーンステーに貼り付けられていますので、それも原因かもしれません。
宜しくお願い致します。
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はじめまして。私は今、コルナゴclx2.0にを持っています。チェーンを外してクランクを回すととても重く、bbに問題があると考えています。bbはfsaのmega exoというものがついています。クランクはckt1 farenheit-carbon というfsaのものです。(colnago team Issue?)
今のクランクとbbの互換性はあるのでしょうか。また、このクランクに合うbbはどのようなものになるのでしょうか。