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トルクレンチの扱い方
自転車業界でのカーボン素材の流行によって、様々なパーツが「カーボン化」されました。カーボン素材は繊維強化プラスチックの一種なので、想定しない力には大変弱い、という特性を有しています。そのため今までの「勘」に頼った締め付けを行うと、破損や寿命短縮につながります。カーボン以外にも、軽量化が進んだ現在の自転車では、締め付け時に注意が必要な素材が多数有ります。トルクレンチは、締め付けによるトラブルを防ぐのに有用な測定器です。
カーボン製品についてはカーボン製品の取り扱いに詳細な解説を掲載しています。また、自転車に使えるトルクレンチはこちらで販売しております。
目次
トルクレンチの必要性
「強く締め付けたほうがしっかり固定できる」といってむやみにネジを締め付ける方がいますが、ネジは締めすぎると、むしろ正しい固定力を得ることが難しくなり、パーツやネジの破損の原因にもなります。
ネジは頭の部分がパーツにしっかり密着することで、ネジ山とネジ穴が十分に密着して固定されます。締め付けが弱ければもちろんすぐ緩みますが、あまりに強すぎるとネジ自体が変形し、固定力が大幅に下がってしまいます。
そこで、ネジを緩みにくくするには、過剰に締め付けるのではなく、
- 調整ネジや、弱い素材を固定するには緩み止めを塗る。調整ネジ(たとえばディレイラーの可動域など)や、強いトルクをかけられない素材には、接着剤の一種である緩み止めをねじ山に塗り、締めます。
- 通常の固定ネジにはグリスを塗る。トルクをかけることの出来る素材の場合、ねじ山にグリスを塗ることで、ネジ頭にかかる圧力を大きくし、緩みにくくすることが出来ます。同時に、ネジに無用なストレスがかかることもありません。
- 設計通りのトルクで締め付ける。
ことが重要です。経験豊富な方以外は、カーボンパーツなどのデリケートな素材の取り付けにはトルクレンチなどの測定器を使うことをお勧めします。
このあたりの話は、「軸力」という考え方が重要です。詳しくはこちら(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AD%E3%81%98%E7%B7%A0%E4%BB%98%E3%81%91%E7%AE%A1%E7%90%86%E6%96%B9%E6%B3%95)を参照してください。
人間の勘とトルクレンチ
全てのネジで指定トルクを守るのが理想ですが、「点検箇所が多く手間がかかる」「そもそもトルクレンチを持っていない」場合には、勘で締め付けを行う必要があります。経験豊かな方であれば、致命的なほど締め付け力がばらつく事は少ないですが、初心者の方や、適正トルクを知らない方は、一度はトルクレンチのような計測器を使って、勘の調整を行うことをお勧めします。
トルクレンチの扱い方
トルクレンチはあくまで「測定器」、つまりものさしや量りの仲間です。「通常の工具として扱える」と謳ってある場合以外は、途中までは通常の工具で締め付けてください。また、「大トルク用」は自転車用としてはほとんど使われませんので、注意してください。
- 適切なソケットを取り付ける
トルクレンチは、様々なネジを測定できるように、「ソケット」と呼ばれる専用のアーレンキー・ソケットレンチを取り付けられるようになっています。ソケットが付属していない場合は、工具店などで適切なものを購入する必要があります。
- トルクレンチの設定をする
デジタル型の場合は、ソケットに触らないで電源を入れます。ソケットに触れると、初期調整に失敗して正しい値が表示されなくなります。プリセット型の場合は、ダイアルなどで目標トルクを設定します。具体的な操作方法はトルクレンチの説明書をご覧下さい。
- 締め付ける
指定された部分を持って、対象のネジをゆっくりと締めていきます。デジタル型・ビーム型の場合は目標値に到達したら、プリセット型の場合は音が鳴ったら締め付け完了です。
トルクレンチがない場合の目安
一般に締め付けトルクは「N・m」で表されます。これは、「長さが約10cmあるアーレンキーの端に、重さ[締め付けトルク]kg(1mは100cmで、1Nは0.1kgとほぼ等しいです。)の錘を下げた状態」という意味です。もしトルクレンチがない場合は、これをヒントにして締め付けを行えば、ネジをつぶすようなトラブルは発生しにくいでしょう。
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投稿者情報:mechanic
京都のサイクルショップ自転車のQBEI(きゅうべえ)が自転車メンテナンス全般に関して綴ったブログ。ネジの締め方からカーボンバイクの扱い、電動DURA-ACEまで、バイシクルメンテナンス・自転車の扱い方を幅広く掲載。
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- 2011/03/13 - mechanic
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こんにちは、スタッフ山田です。
インフォメーションご覧頂き誠に有難うございます。
トルクレンチは計測器や測定器に部類するものなので安価に
出来ないのは仕方がございません。
今後カーボン製品などのデリケートな軽量パーツが普及するにつれ
トルク管理は重要度が増してくることでしょう。
今後も役立つ情報を提供して行きたいと考えております。
質問・コメントは下記フォームよりお送り頂けます。
- カテゴリ/タグ:Tools(工具について), アップグレード, メンテナンス
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ほとんどの人が、トルクレンチの値段の高さに手が出ないと思います。
ですがこのページを見て、プロでもトルクレンチを使うという、
締付トルク管理の重要性が良く分かりました。