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ドイツが生んだバイクコンピュータ SIGMA ROX5.0 インプレッション

投稿者:h_yamada

ドイツが生んだバイクコンピュータ SIGMA ROX5.0 インプレッション

目次

はじめに

筆者はこれまで、Cat eye社のVelo Wireless+、同社のV3nなどを使用してきた。簡単に紹介すると、ハートレート、ケイデンス、スピードなどを記録することができるオーソドックスなコンピュータであり、特にこれといって不便は感じていなかった。しかし、バイクを立てかけている際にコンピュータ本体を破損した。その後も騙し騙し使用していたがついに、異常な数字を示し始めたので使用をやめた。

サイクルコンピュータが故障した時、不幸中の幸いかSIGMA ROX5.0のインプレッションを行う機会を得たので、以下に1ヶ月程度使用しての評価を書いていく。実際の取り付け、走行中の操作性、またData Centerを利用してのトレーニングマネージメントについても少し触れていく。なお、筆者は最初に記した通り、SIGMA製のサイクルコンピュータを使用するのは初めての経験であるため、他社から乗り換えた場合の視点なども触れていきたい。

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取付け・設定

センサー

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ROX5.0に付属しているセンサー類はハートレートセンサー、スピードセンサー、ケイデンスセンサーの3種類である。スピードセンサー、ケイデンスセンサーはそれぞれ独立しており、それぞれフロントフォーク、左側チェーンステーに取付け、データの取得を行う。

ハートレートセンサー

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ハートレートセンサーはベルトとセンサー本体が取り外し可能なもので、オーソドックスなタイプである。センサー類に使用される電池はCR2032であり、入手性に優れる。ライド中センサーの電池が切れたとしても、コンビニなどで買い求めることができる。通信規格はマニュアル、本体ともに記載されておらず、詳細は不明であるが、Bluetooth、ANT+とも異なる規格のようであり、センサーの流用を考えるライダーは注意が必要だ。ROX5.0本体のバッテリーには、CR2450を使用する。CR2032と違い、入手性は比較的低いといえる。

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取り付け

マウント方法は専用のマウントブラケットを使用し、ハンドル、ステム等へと容易に取り付けができる。マウント台座をハンドルやステムに取り付ける際には、ゴムリングを用いる。しかし、台座の裏側に粘着剤がついているため、ずれる心配や、路面からのショックで取れる心配もほぼ無用と思える。実際、取り外す際には少し苦労をするほどだった。万が一ゴムリングが切れたとしても、すぐにコンピュータが落下するような危険はほぼないといえる。

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センサー

各センサーをバイクへと取り付ける際には、公式ページにある動画を見ながら行うことで、スムーズにセッティングできる。マグネットをセンサーが感知する一般的なコンピュータと変わらない仕様なので、今までにサイクルコンピュータを使用していたユーザーなら迷うことはないはずだ。

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取付けに際して不満に思うことはなかたが、一つ気になる点があった。公式ページには、本体の取り付けを行う際にクイックスタートガイドを参照するようにと書かれているが、筆者はどこにあるのかが分からなかった。

全てのセンサーの取り付けには、タイラップ留め、ゴムバンド留めのいずれかを選択することができる。バイクを2台所有しており、センサーの共有をするライダーはゴムバンド留め、1台のみというライダーはタイラップで確実に固定するなどすればよいだろう。

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マグネット

些細なことではあるが、タイラップとゴムバンドが両方同梱されており、ライダーに選択肢が与えられているのは感心した。ケイデンスセンサーに使用するマグネットに関しても、クランクアーム本体にタイラップで固定するものとペダル軸へ取り付けるものが同梱されており、ライダーによって選択することができる。筆者の経験ではクランクアームへの取り付けを行うためのタイラップのみが標準で入っており、ペダル軸へ取り付けられるマグネットが入っていることはなかった。非常に好感がもてる。

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またそのマグネットも、タイラップ留めをする際には、スペーサーを咬ませることで、さまざまなフレーム形状にも対応している。クランクアームとチェーンステーの距離が長いバイクなどでは、使用することになるだろう。とにかく、どんなライダーでも満足いくセットアップができるようパッケージングされており、唸らされた。

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マグネットに関して一つ難をあげるとすれば、スピードセンサー用マグネットだろう。取り付けの際には特に苦労することがなく、エアロスポーク・丸スポーク共に取り付けが可能なようにはできているが、取り外しが非常に困難だと感じた。頻繁に前輪のマグネットを外すライダーは、他にマグネットを買い求めるなどしたほうがスムーズだろう。

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設定

ROX 5.0本体の言語は、日本語には対応していないため、多くのライダーは英語に設定し使用することになると思う。その中で、日付の設定をする際に、日本で一般的な 年/月/日 の順での表示が可能であればよかった。ドイツ製であり日本語へのローカライズはされていないため、仕方ないとは思うが、少し気になる部分ではある。しかし、コンピュータ本体のカレンダー機能を使用することはあまりなく、実用的には全くの問題がない。

ライダーの情報をコンピュータへ登録する事ができる。これは同価格帯の他社製コンピュータではなかなかないことだろう。設定できるデータはライダーの年齢、体重、性別であり、これらの項目は主に消費カロリーや後述するターゲットゾーンへの影響があると考えられる。より正確にライダーの情報をコンピュータに設定することで、より正確なトレーニングデータを取得することができる。繰り返すが、同価格帯のコンピュータでこの機能はなかなかお目にかかれない。

 

また些細なことではあるが、デフォルトでのホイール周径が2133mmに設定されていた。筆者は今まで2096mmで設定していた。3センチ以上の差異がある。気になったので実際に前輪の周径を測ってみることにした。マヴィック社製 キシリウムエリートに、Vittoria社製Rubino Pro3 23c blackに7.5barという仕様だ。巻き尺をあてて測ってみると、2131mmであった。SIGMAの初期値である2133mmとの差異は2mmである。実際にライダーの体重が乗っていたわけではないので、それによる沈み込みを考慮すると、実際にはもう少し小さい径になると考えられるが、印象は良い。

 

コンピュータのセッティングを行っていく際には、数値の入力を完了した後、OKやRESETといった文字の表示が行われる。現在行っているコンピュータの動作が何なのか分かるため、点滅などで表示するコンピュータよりも格段に設定がし易かった。

ターゲットゾーン

ターゲットゾーンと名付けられた機能がある。具体的には、現在の心拍数が予め設定されたトレーニングゾーンのどの段階にあるかを示し、またその段階で行ったライドが全体の何%かを表示してくれる機能だ。例えば、脂肪燃焼には最大心拍数の60~80%、心肺能力を高めるには80~90%、無酸素域でのトレーニングには90%~以上などのトレーニングの目安がある。それらをゾーン1~4まで振り分け、今の心拍数がゾーンのどれにあたり、またそのゾーンで行ったトレーニング量はライド全体の内、何割を占めているのかを知ることができる。

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以下に例を挙げよう。例えば、リカバリーライドを行ったとする。この時推奨される心拍数は最大心拍数の60~70%程度で、あまり負荷をあげることは避けなければならない。

トレーニング終了後、ターゲットゾーンの欄を一目すれば、きちんと目標としたゾーンで走ることができたのかなど知ることができる。ゾーン1~2のパーセンテージが全体の多くを占めていれば、そのライドは成功といえ、ゾーン3~4のパーセンテージが多くを示しているようなら、そのライドは失敗だったといえる。休むべき時に追い込んでしまうライダーは多いので、この機能は非常に役立つものといえる。

また現在の心拍数を、実際の数値ではなく、最大心拍数から求めたパーセンテージで表示することができる。経験豊富なライダーであれば、そのままの数値でも直感でゾーンを把握することができるだろう。しかし、この機能があれば、初めて心拍をトレーニングデータとして使用するライダーも即時に現在の負荷を確認することができる。

キャプチャ

またROX 5.0にはランニングの際にも使用できるよう、手首につけられるバンドが付属している。筆者はランニングを行うことがないので、割愛する。

バックライト

コンピュータ本体にはバックライト機能が搭載されている。夜間や薄暗い中でも数値の確認を行うことができる。バックライトのオンオフは5つある物理ボタンのうち2つを同時に押すことで行え、容易だ。しかし、ライトの点灯時間はいずれかのボタンを押してから3秒程度であり、常時点灯させることはできない。パッと数値を見る程度であれば問題はないが、常に明るく表示させるような使い方はできないので注意が必要である。

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使用感

実際にライドに使用しての感想は、非常にスムーズであることが印象的であった。しかし、いくつか気になる点もあった。

まず良い点をあげると、数値の確認がしやすい。白黒液晶での表示だが、数字のフォント(?)が特徴的なのか、パット見でも頭に入ってくる。コンピュータを凝視することがなくなり、ストレスフリーだった。センサー類の反応も機敏であり、ほぼ遅延もなく、センサー類も走りだせば自動で感知・オンになる。走りだしてから、ブレーキングをしてからの数値の推移がもたつくコンピュータも多い中、優秀であるといえる。

 

コンピュータの裏面に4つのスイッチがあり、それがマウントへ設置することで押下され、コンピュータがオンになる。いちいち取り付けたあとにボタンなどを押す必要もなく、スムーズだと感じた。

ROX 5.0では、現在、平均、最大のそれぞれスピード、心拍数、ケイデンスの数値に加え、現在のゾーン、それぞれのゾーンで全体の何割を走ったのか、総走行距離、気温、消費カロリー、時間、ストップウォッチ、カウントダウン機能、走行時間、総走行時間を知ることができる。

ライド中に知りたくなる現在の心拍数関係のボタンは本体上部のボタンを押すことで表示を切り替えることができる。本体下部にあるボタンでは、走行距離、平均速度など、ライド後に知りたくなる情報を表示させることができる。このボタンの上下は、逆であるほうが走行中でも押しやすいかもしれないが、それは人に依るだろう。気になる点としては、表示する値をずっと表示させることができないという点だ。例えば時計をずっと表示していたくても、気がつけば違う画面に切り替わっており、またボタンを2度3度押して表示を切り替え無くてはならない。ほんの些細なことではあるが、筆者は常に時間を気にしながら走るため、無視できるものではなかった。

ラップ機能

上には記さなかったが、ラップ機能というものがある。ある一定区間のデータのみを切り抜いて保存できる機能だ。100kmのライド中にある3kmの登坂のデータだけをとる際に仕様する機能と書けばいいだろうか。これは本体中央下部のボタンを押すことでオンオフが切り替えられる。ボタンを押せば画面の表示が切り替わり、ラップ機能がオンになったことを示してくれる。終了する際には再度ラップボタンを押し、画面の表示が切り替わることでラップの終了を知ることができる。ラップボタンの押しやすさ、きちんと記録できたかどうかの確認が容易であることなど、好印象だ。切り抜いた区間データは、別途記載するData Centerで個別に管理、閲覧することができる。

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総評

この価格帯のサイクルコンピュータとしては、頭一つ分抜けた機能を有しているといえるだろう。センサー周りの配慮、表示・設定できる項目の多さ、その信ぴょう性、どれをとっても高いレベルにある。トレーニング、普段使い共に堪える製品だといえる。Data Centerへログをアップロードすることでより詳細なトレーニングデータの取得もできるため、拡張性も高い。

あえて言うならば、マニュアルが少々分かりづらいこと、サポート面での不安があることぐらいだろう。ユーザーが多いとはいえないため、何か問題があった時、解決策を見つけることも容易ではないかもしれない。しかし、総合して良いサイクルコンピュータであることは間違いがない。初心者、プロライダーというよりは、普段トレーニングとしてライドを行うライダーに向いたサイクルコンピュータだといえる。

何度も繰り返すことになるが、言葉を変えるなら非常にコストパフォーマンスが高いサイクルコンピュータだ。心拍計、ケイデンスセンサーが付属し、これだけの製品をこの値段で販売することが可能なのは、驚くと同時にサイクリストにとって良い時代になったと感じる。

 

SIGMA(シグマ) ROX 5.0 本格トレーニングに必要な情報を記録できるサイクルコンピューター

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